チベタン・マスティフは多くのマウンテンドッグ種やグレートデン、コモンドール、クーバースといった近代のワーキンググループ犬種の始祖犬と考えられる歴史のある犬種であるが、1800年代以前は西洋人がチベットに入る事がほとんど許されず、その由来については不明な点が多い。
中国で発見されたチベタン・マスティフの原種(古代チベタン・マスティフ)の頭蓋骨は、石器、青銅期時代(紀元前1100年頃)のものと推定される。
17世紀のチベタン・マスティフに関する記述は、マルコポーロの東方見聞録やイエズス会の宣教師が残した文書にあるが「被毛は光沢のある黒、ロバの様に巨大で頑丈な骨格。どう猛で吠え声は騒がしい」と言った断片的なものである。
古代チベタン・マスティフは、アッシリア人、ペルシャ人、ギリシア人、ローマ人に軍用犬として同伴し、その後ヨーロッパに侵入したフン族のアッティラ大王やモンゴル帝国を建国したチンギス・ハンと共に移動し、多くの地域の使役犬種の改良に貢献したと考えられる。
チベタン・マスティフは今日でもヒマラヤ山系の標高5000メートルに近いチベット、ネパール、ブータンで遊牧民によって飼育されているが、古代チベタン・マスティフといえる純粋なチベタン・マスティフを見かける事はない。
チベットの人々はチベタン・マスティフを自分たちを守るガードドッグとして、家族同様に大切に扱ってきた。
チベットではチベタン・マスティフには、この世に再来した修道士や修道女の魂が宿っていると考えられてきた。
遊牧民が家畜の群れをより標高の高い場所へ移動させる時は、チベタン・マスティフはテントに残され、ヤギや羊、ヤク、女性や子供をオオカミやユキヒョウ、強盗から守るガードドッグとなる。
聖地ラサでは日中は寺院や家の入り口、遊牧民のテントにつながれ、夜になると解き放たれるという習慣が残っている。
ラサ・アプソと共に寺院の警戒にあたらせることも多い。
チベタン・マスティフがイギリスに初めて渡ったのは1847年で、インド総督がビクトリア女王に献上した。
1859年にイギリスでチベタン・マスティフのドッグショーが開催され、1873年には血統登録台帳が作成された。
チベタン・マスティフという犬種名はその際にKCが名づけたものである。
1931年犬種標準が作成され、KCやFCIにも採用された。
アメリカには1950年代後半、アイゼンハワー大統領に2頭のチベタン・マスティフが贈られたが、中西部の農場へ連れて行かれた以降の消息は不明である。
その後1969年に数頭のチベタン・マスティフがチベットやインドから輸入された。
AKCはチベタン・マスティフを155番目の犬種として公認した。
アメリカやイギリスで見られる今日のチベタン・マスティフは、チベットにいるチベタン・マスティフに比べると性質が穏やかである。
メスの発情期は年に1度しか見られない。
原産国 | チベット |
分類 | ワーキング(AKC) ワーキング(KC) 第2グループ(JKC) |
体高 | ♂66.0cm以上 ♀61.0cm以上 |
体重 |