アラスカン・マラミュート

系統的にはスピッツ系に属する犬で、アラスカのセワードペニンシュラ地方を主産地とする。
この犬種の祖先はシベリア原産と考えられているが確証は無く、マラミュート族(マールマット・イヌイット)によってそり引き、狩猟、漁業用に長期間にわたって飼育されて来た。
アメリカ大陸への白人上陸までは拡散を免れたため、高度に純粋性が保たれた古いタイプの犬種である。
北極地方や北極民族の起源については諸説あるが、仮りに氷河期にはシベリア、アラスカ、グリーンランドが陸続きであったとするならば、さらに同一の民族が犬を連れて大陸を移動していたとするならば、シベリアのサモエドハスキー、グリーンランドのエスキモー犬とアラスカン・マラミュートが同系統の犬である事の説明はできる。
アラスカの北部にロシア人が漂着(アラスカの発見)した時、すでに原住民が住んでおり、ロシア人達は母国に戻り「犬ぞりと原住民」の様子を詳細に報告している。
アラスカがアメリカの領土となった時、アラスカに入ったアメリカ人探検家も「数百マイルもそりを引く、疲れを知らぬ犬」について驚きをもって記述している。
「犬の力を借りる事なくこの地域を旅行する事は不可能」とも述べ、アラスカン・マラミュートの能力を賞賛している。

スピッツタイプの犬は立ち耳、巻き尾、密生する厚い被毛が特徴で極寒の地に適応できる北方犬種特有の体形となっている。
二重構造の被毛上毛は3~5cmの粗毛で開立しているが、柔らかい下毛は油性を帯び、水分をはじく羊毛状で、皮膚に沿って密生して体温の放散を防いでいる。
ふさふさした巻き尾は氷上で眠る時に顔を覆い、寒さから身を守るために役立つと言う。
犬ぞりは原住民にとって輸送・移動手段として欠く事のできないものであった。
現在でも極地の探検や冒険にアラスカン・マラミュートは欠かせない犬種である。
アラスカでは犬ぞりレースが定期的に開催されており、アラスカン・マラミュートはその代表犬種で多くのレースの記録保持者でもあり、理想的なそり犬としての評価が健在である。
骨格、特に四肢は強靱で筋肉に富み、持久力が強く、耐寒性に優れ極地帯での活動に向いており、長距離のそり引きを可能にしている。

さて、アラスカ地方に白人が入植し始めると、賞金を賭けた犬ぞりレースが盛んとなり、より速い犬の作出をめざしてアラスカン・マラミュートに他の犬種の血を入れる事が流行した。
当然ながら、純粋なアラスカン・マラミュートの血統が衰退に向かった。
幸いにも1926年アメリカ国内で北方犬研究の気運が高まり、アラスカン・マラミュートの純血を維持する活動が始まった。
アラスカン・マラミュートは外観や目の表情がオオカミに似ているが、性格はおだやかで、人に対する親和性に優れ、献身的で忠実な伴侶となるため近年は家庭犬としても人気が高い。
密生した被毛が体熱の放射を妨げるため、温暖地での飼育では熱射病対策が必要である。

原産国アラスカ
分類ワーキング (AKC)
ワーキング(KC)
第5グループ(JKC)
体高♂55.9~63.5cm
♀50.8~58.4cm
体重♂38.6kg以上
♀34kg以上