ベルジアン・マリノア

ベルギーのシープドッグ4犬種の中で、最も早くから知られていた犬種で、ベルジアン・シープドッグベルジアン・タービュレンと共通の起源をもつものである。
この犬種が多く飼育されていたマリーヌと言う町の名称が犬種名の由来になっている。
ヨーロッパでの使役の歴史は古く、軍用に最初に用いられた犬種であり、赤十字の活動にも起用された。
ベルギーのシープドッグ4犬種は被毛の色や長短によって分類されるがマリノアはタービュレンとほぼ同様の毛色で、フォーンからマホガニーまでの短い直毛を特徴とする。
外貌がジャーマン・シェパードに酷似しており、用途でも競合している事から普及率は高くないが、使役能力の競技会では常にジャーマン・シェパードのライバルである。
4犬種の中では比較的性格が穏やかで、従順で理想的なコンパニオン・ドッグであると共に持久力に富み、警察犬、警護犬など使役犬としての需要は増えている。

牧羊犬には2種類ある。1つは羊の群れの中に居て、羊を襲う外敵を追い払役目の護衛犬で、他の1つは羊の行動を意図的に混乱させ他の場所に導く統率犬である。
ベルジアン・マリノアは護衛犬として特に有能な犬である。
羊を守る作業は犬の飼育者の管理外で行われるのが普通であり、護衛犬そのものの資質が問題となるケースが多い。
羊を傷つけてはならないと言う経済的な問題を犬が理解する事はない。
護衛犬は羊をいたわると同時に、羊に信頼されなければならない。
外敵に立ち向かう体力と体格も必要である。
犬が生後8週齢になる頃から子羊と共に育てる事で、羊との絆を築く事ができると言う。この時期は8週齢が最も適当で、遅過ぎても早過ぎても効果がないと言われている。

いわゆる群れを作る動物(羊)は、平穏で外敵の居ない状況下では比較的、自由(無秩序)に動くが、ひとたび危険が迫ると急激にひとつの群れになって、同一の行動をとろうとする。
いかに有能な犬とは言え、百頭を超える羊を物理的に管理する事はできない。
犬は羊が群れを作ろうとする状態(パニック状態)を作り出し、塊となった羊を誘導するのである。
誘導と言っても羊を呼ぶのではなく、羊の進むべき方向以外の他の方向からことごとく責め立てる(追い込む)のである。
羊に群れを作らせ走らせる事や、決まった方向に追い込む行為はオオカミの血を引く猟犬種にとってはほとんど本能的なものであり、牧羊犬のトレーニングにはさほどの時間を要さないと言われる。

「マリノアの不幸」と評されるマリノアの特徴がある。
骨量の不足、後肢アンギュレーションの不足、背線の傾斜不足、短胴と、これらはことごとくジャーマン・シェパードに比べられ「貧弱なジャーマン・シェパード」とみなされるからである。
あまりにも形態や用途がジャーマン・シェパードに類似しているための不幸と言わざるを得ない。
しかし「本能的な羊の保護者」と言う名誉ある称号はマリノアのみに与えられている。

原産国ベルギー
分類ハーディング(AKC) 
パストラル(KC)
第1グループ(JKC)
体高♂61.0~66.0cm
♀55.9~61.0cm
体重♂ 28~30kg
♀ 28~30kg