ブルドッグはマスティフ系の犬種で、イギリスに於ける700年にわたる犬の闘技の歴史に翻弄された犬種である。
犬種名はブル(雄牛)と闘争させる競技(ブルベイティング)に使われた事に由来する。
ブルベイティングは13世紀にイギリスの貴族が始めたのがきっかけで全国に広がり、19世紀に至るまで庶民の娯楽として人気があり、スポーツとみなされる程で熱狂的なファンに支えられていた。
ブルベイティングは杭につながれた雄牛に対し、数頭の犬を放す方法で行われたが、最初に牛の鼻に噛み付き、牛を倒した犬の持ち主には高額の賞金が支払われたと言う。
ブルドッグは必然的にこの闘技に都合の良い体形、性格に改良されて行く事になる。
美しさや均整など他の犬種に望まれたものがブルドッグに求められる事はなく、ひたすら獰猛な系統の犬が作り出された。
口吻を短くし、鼻が口先から後退して上を向いている事で、牛に噛み付いた時に呼吸が楽にできた。
下顎を発達させる事により、噛み付く力を増強した。
短足で体高を低くする事により、牛の角による反撃の際にすくわれないようになった。
牛の角によるダメージを小さくするために皮膚がたるんでいる事を良しとし、断耳もされていた。
首を短くし、重心を前躯に置く事により、噛み付いた牛に振り回された時の遠心力を小さくした。
もちろん体重が重い方が闘いに有利であり、当時のブルドッグは60kg近くに達していた。
性格も好戦的で獰猛なものが選抜された事は言うまでもない。
動物愛護の観点からイギリスでは1835年に犬の闘技が非合法となった。
闘犬の歴史が終わるとブルドッグは出番が無くなった。
特殊な用途に特化された特異な形態の犬が他の役務に役立つ事はなく、血統の存続が危ぶまれた時期もある。
一部の熱心なブリーダー達がブルドッグの保存と改良に乗り出し、現在のブルドッグを作り出した。
最も留意されたのは闘争的、好戦的な気質を取り去る事で、この点ではブルドッグは別の犬に生まれ変わったと言って良い。
現在のブルドッグはその顔貌とはまったく異なる温和な性格の犬となっている。
ブルドッグはその外貌と、かつて牛と闘う犬であったと言う先入観により獰猛な犬としてのイメージが強いが、見かけと実際の性格にこれ程の差がある犬はない。
犬の闘技は13世紀から19世紀まで公然と行われていたので、ブルドッグのイギリスに於ける知名度は格別のものがある。
ブルドッグは「勇気」「不屈」「忍耐」の象徴として名誉あるイギリス国犬の地位を得て、イギリス海軍のマスコットにもなっている。
各国の犬種団体の分類から見ても分かるとおり、ブルドッグには華やかな役割は与えられていないが、世界中のマニアに愛好されている。
背は低く、肩幅広く、頭部は大きく、顔は短く、下顎が突き出た特異なバランスと風格の短毛の中型犬。
善良で勇敢、優しく温順、些細な物事に動じない沈着で忠実な犬種であるが、訓練性能は低いと言わざるを得ない。
後躯が貧弱(骨盤が小さい)で頭部が大きいので出産に際しては難産を覚悟すべきで、しばしば帝王切開に至る。
暑さには極端に弱いので、飼育環境には注意を要す。
原産国 | イギリス |
分類 | ノン・スポーティング(AKC) ユーティリティ(KC) 第2グループ(JKC) |
体高 | ♂40cm前後 ♀40cm前後 |
体重 | ♂23~27.5kg ♀23~27.5kg |