キースホンド

キースホンドは毛色が狼に似ている事から「ウルフ・スピッツ」とイギリスで呼ばれていたスピッツ系統の中型犬である。
原産国のオランダでは運河に停泊する船の番犬に用いられる習慣があり「はしけ犬」とも呼ばれていた。
キースホンドは北方犬種の代表とされる犬で、番犬として飼育された歴史が長く、オランダで最もホピュラーな犬である。

犬名のキースホンドは直訳すると「咬む犬」の意で、オランダ語のケーゼン(咬む)に由来すると言う説と人名由来説とがある。
フランス革命当時、オランダ国内でも政情が不安定で国王系の党派と中産階級を率いる愛国党派が対立していた。
愛国党の党首名がキース・デ・ギーセラエルで、自分が飼育していたこの犬種を党のシンボルとして象徴的に利用したのである。
当時の風刺漫画や内戦に関連した広報に、この犬が愛国者のシンボルとして頻繁に登場する。
党首の愛犬の名が「キース」であったとも言われているが、この話は後世のつじつま合わせと言えなくもない。
仮に人名由来説を正当とした場合、キースホンドはそれ以前は何と呼ばれていたのかと言う確かな情報は残っていない。

さて、愛国党のシンボルとして知れ渡ったためにキースホンドは絶滅の危機を迎える事になる。
内戦で国王派が政権をとったために、民衆は反体制派のシンボルであるキースホンドを飼育する事ができなくなったのである。
キースホンドの飼育者は国王派に対する敵対者として見られるのを恐れ、処分する者が多かった。
キースホンドにとって不毛の時代であるが、愛国党への忠誠心を捨てなかった川船の船長や農民などの手によって細々とその血統を維持保存して来た事情がある。
近年、オランダを代表する犬種として再認識されるまでの200年間、キースホンドはほとんどタイプを変える事なく飼育されて来た珍しい犬種である。

キースホンドが今日の座に返り咲くまでにはバン・ハルデンブルック夫人の功績が大きい。
1920年、夫人は国内に残るキースホンドについての調査を開始し、正しい系統のキースホンドを多数発見する。
過去の時代の犬籍簿も発見され、この後10年以上をかけてキースホンドの再生に尽力したのである。
オランダのケネルクラブは1933年にキースホンドを公認している。
1925年にキースホンドはオランダからイギリスに渡り、イギリスを経てアメリカに輸出された。
1930年にAKCがキースホンドを公認して今日に至る。

キースホンドは過去にはウサギやネズミ駆除に使われたと言われているが、本来大地を駆け回るタイプの犬ではなく、現在のキースホンドが猟欲を示す事はない。
開立した粗い被毛に覆われ、短胴で小さな立ち耳を持ち、尾を背負う典型的なスピッツ系の犬で、この系統の犬の例にもれず神経過敏である。
キースホンドはポメラニアンの直接の祖先であるとする説は信頼性が高い。
我が国ではキースホンドとして定着しているが、ケースホンドの発音が近い。

原産国オランダ
分類ノン・スポーティング(AKC)
ユーティリティ(KC)  
第5グループ(JKC)
体高♂45.7cm
♀43.2cm
体重♂16~18kg
♀16~18kg