愛犬家でこの犬種の名を知らない人はいない程にポピュラーな愛玩犬である。
ポメラニアンの祖先はアイスランドやラップランドの氷原でソリを曵いていた大型のスピッツ族サモエドである。
この大型スピッツがドイツに移入され牧羊犬、番犬として使用された。
スピッツはもともと体重が13kgもあったがドイツで使役犬として定着するに従って徐々に小型化して行く。
ドイツでは現在でもポメラニアンを「小型スピッツ」と呼んでいる。
小型スピッツは北ドイツのポメラニア地方で多く飼育されていたために、海外ではポメラニアンと呼ばれるようになった。
1888年イタリアを旅行したビクトリア女王にポメラニアン「マルコ」が贈られたが、マルコは体重が9kgあったと言われている。
19世紀以降ポメラニアンがヨーロッパ各地に紹介されるようになると、さらに小型のものが求められるようになり、ポメラニアンの小型化に拍車がかかる。
ポメラニアンは小さくなるに従って人気が高まり、かつてのソリ曵き犬が婦人向けの愛玩犬として脚光をあびる事になった。
ポメラニアンの小型化で最も重要視されたのは被毛の質と毛色であった。
北方動物は大型で白色が常である。
ポメラニアンも大型スピッツ時代はホワイト一色であったが、クリームが主流となり、一時的に茶色のセーブルが大流行して高値で取り引きされ、その後オレンジ色が作出された。
新色が出るごとに貴婦人たちが競って入手しようとした。
ポメラニアンが現在のサイズやタイプに定着したのはここ100年の事であり、20世紀に入って世界的な流行犬となったのである。
大型犬種を小型化する事により神経質な面が現れるが、我が国にはポメラニアンは「神経質」「好戦的」と言う風評が定着している。
日本で1950年代に流行し、かん高い声でよく吠えると言う悪評があったジャーマン・スピッツの系統である事も一因と思われる。
一般に室内で飼育される犬は家族以外の他人に過剰な警戒心をもちやすい事も原因と考えられる。
ポメラニアンは我が国でマルチーズ、ヨークシャーテリアと共に「愛玩犬の御三家」と称され急速に普及した犬種であり、需要増に対し無秩序な繁殖で応えた結果、好ましくない資質を固定してしまった事も否定できない。
日本では高度成長期に座敷犬の飼育ブームがおこり、ポメラニアンは事実上我が国のペットブームの幕開けを飾った犬である。
ブームの追い風を受けて利殖目的で参入した素人ブリーダーがまず手がけたのもポメラニアンの繁殖であった。
ペーパーボーンと言われる骨格の虚弱な犬や、サイズの過大など問題のある犬が市場に出回り、犬質の低下が嘆かれた。
ビクトリア女王はポメラニアンを特に愛好し、優良な系統をヨーロッパに普及させた功労者であると言われている。
女王は1891年の第1回のクラフト・ドッグショーに数頭のポメラニアンを出陳している。
女王が亡くなる際に枕元に呼ばれたのは「トーリ」と呼ばれるポメラニアンであった。
ヨーロッパに於けるポメラニアン人気は、まったくタイプの異なるペキニーズの出現によって下降し始める事になる。
ペキニーズをヨーロッパに紹介したのも同女王である。
ポメラニアンは小型で短胴、被毛は豊富で美しく開立し、尾はふさふさと巻き背中に負う。
素直で快活、知的で可憐な小型犬である。
原産国 | ドイツ |
分類 | トイ (AKC) トイ(KC) 第5グループ(JKC) |
体高 | ♂20~25cm ♀20~25cm |
体重 | ♂1.8~3.2kg以下 ♀1.8~3.2kg以下 |